両親と守谷で『ペンギン・ハイウェイ』を観たあとで、妻の実家の柳瀬川へ向かう。

両親と映画館に行くなんて久しぶりだ。スターウォーズエピソード2以来だろうか。
母親とは『ぐるりのこと。』を観に行ったことがあったな。
映画は素晴らしかった。
夏の町、草原に吹く風、ひるがえる布、駆け回る子どもたちと変形するペンギンたちがアニメーションの魔法によって生き生きと描かれている。
そして、それらがすべて1人の少年の成長を描くことに奉仕している。
子供が小学校にあがるくらいにはみせたいなあ、と思っていたら、両親が口々に難しかった、と言ってた。

守谷駅からつくばエクスプレスに乗って、南流山駅で武蔵野線に乗り換える。
南流山駅にはブックエキスプレスがあるので乗り換えの待ち時間を過ごす。
昔よく乗り換えで使った駅だたが、その頃はなかった気がする。
『ペンギン・ハイウェイ』を観たあとなので、宇宙とか時間とかの本に目が行く。
『宇宙の「果て」になにがあるのか 最新天文学が描く、時間と空間の終わり』が気になる。
ブルーバックスは門外漢にも分かりやすく書いてくれていることが多いので読んでみたい。

以前は『サイエンス・ブック・トラベル: 世界を見晴らす100冊』という科学系の本の書評集をよんで気になったものを読んでいた。
科学系の本は、それがどこまで信頼に足る研究なのか、どういう文脈に位置する本なのかを知ってから読みたいという気持ちが強い。
そういった意味で信頼している山本貴光さんの案内は非常に心強かった。良い企画なので3年に1度くらいは刊行してほしい。

北朝霞から朝霞台に乗り換える途中で『TSUTAYA BOOKSTORE 朝霞台店』をちらっとみる。
柳瀬川には柳瀬川書店というのがあるのだけど、そこには寄らずに妻の実家へ。
妻の部屋で妻の子供の頃の写真をみて、自分の子供の頃の写真と頭の中で掛け合わせて子供の顔を想像したり、お腹に手を当てて胎動を感じたり。
本棚にあったラフカディオ・ハーンの『怪談・奇談』を読んでいたら、まんま『雨月物語』の「浅茅が宿」と同じプロットの話が載っていた。
伝承を編纂したようなものにはこういうことがあるから面白い。あとは二次元に恋したことを僧侶に相談したら本気出せば結婚できると方法を聞きハッピーになる話も載っていた。
それから眠くなってちょっと妻のベッドで昼寝をさせてもらい、晩飯をご馳走になって帰る。
妻のお兄さんとはほとんどはじめて話した。歴史好きらしく、上映していた『せごどん』を通じて話せた。
妻の実家の食卓だたいたいいつもテレビがついているのでありがたい。

帰り道、あと一週間で予定日だね、と言って自分であと一週間かと驚く。

『戦時の音楽』を読んでいる。

家を出たあとに、駅前でインスタのストーリーをみていたら、ホムカミの福富さんが書影をあげていて、そういえば買って最初の2編を読んだくらいのところで止まっていたとを思い出し、急に読みたくなって家に取りに戻った。もうすっかり福富さんのファンだ。福富さんの文章や、黒木雅巳さんの漫画(「ゆうとぴあぐらす」を読んでめちゃくちゃ面白いと思った)が載っている雑誌を作りたいな、とぼんやり思う。目標にしよう。

「11月のストーリー」という1編がリアリティ・ショーのスタッフを主人公にすえているのだけど、自分がリアリティ・ショーを観る時に想像してしまう現場の裏側が書かれていた。観れば面白いと思うし、否定する気もぜんぜんないというか、ハマりたいのだけど、いまいち乗り切れない原因はこのあたりにあると思う。
小編ながら演じる、演じさせるというモチーフがうまく使われていて、ハッとする一文もありとてもよい。

くまざわ書店取手店に行く。

お盆に帰れなかったので少し遅れて実家の取手に帰ることにしたのだ。
両親が会いたがってくれている、といのもあるけれど、急に夏の茨城の空気を吸いたくなった。
茨城の夏は東京の夏とぜんぜん違う。
なんというか、東京より濃度が少しだけ濃い。

駅をでた瞬間夏の夕方気配に包まれて、これだなあと思う。
これより薄くても濃くてもだめで、例えば先日いった福井だと濃すぎて、観光という気持ちになる。
取手駅の駅前は一応ビルが立ち並んでいるのに、なにが違うのだろう、と思いながら子供の頃の夏休みの「まだ遊べる、まだ遊べる」という感覚が湧き上がってくるのを感じていた。

さて、このくまざわ書店は我が青春時代の文化の象徴だった。
ボックスヒルという取手駅直結の商業施設に組み込まれているのだけど、取手駅から常総線に乗り換えていた高校時代にはほとんど毎日通っていた。
中規模書店ながら海外文学や思想書などもしっかり取り揃えている。

小学生が神様だとかいうスピリチュアルっぽい本が売上一位とディスプレイされていてげんなりするが、新刊棚をみて回ると、やはりいい書店だなと思う。
各ジャンルの話題書がコンパクトに並んでいるのだけど、例えば『予測不可能性、あるいは計算の魔――あるいは、時の形象をめぐる瞑想』のような、自分の興味と重なる本がピンポイントで面陳されている。日本文学だと『大江健三郎全集』(セブンティーンの二部が読みたいが高い!!)や『君の話』などなど固い本から気になっているエンタメまで、海外文学も限られたスペースの中に『戦時の音楽』や『リンカーンとさまよえる霊魂たち』がしっかりと置いてある。
取手駅の周辺にこういった本を買っている人がいるからこういう棚が成り立つのもあるとは思うが、書店員や書店本部の努力もあるのだろう。
あなた達のおかげで今の自分がありますと感謝したい。どうかこういう棚作りを守って欲しい。

気がつくと、本屋をやれそうな物件を探している。

店舗でもあり、家でもある状態がいい。
こんな物件でやれたらイベントなんかもちゃんとやれそうだし、家としても文句ない。

https://tokyo-style.cc/2018/08/entry2364-more.php#more

ただ、賃料が半分くらいでないと厳しいだろう。
サラリーマンの副業としてやるのだから、最初は小さく、小さく始めたい。
できれば賃料10万円以内で。

M君とジュンク堂書店池袋店に行く。

M君は一緒にジュンク堂に行くと必ず、生まれてくる娘や妻に本を贈ってくれる。
我々は週に1回くらいは一緒にジュンク堂に行くので、そのたびに娘の本は増える。
今日は『ちっちゃいさん』という可愛らしい絵本をもらった。
本当にありがたいし嬉しいのだけど、彼は俺から少なくない金額、借金をしている。
そんなM君から何度も贈り物をもらうと、奇妙な気分になる。
お金は返さず、プレゼントを渡すその時、彼の中でどんなロジックが成り立っているだろうか。
遠足に行くのにお小遣いをくれたお母さんに、お土産を買って帰る感じだろうか。
M君は一緒に本屋をやろうと話している相棒なので、まあ本屋に向けた貯金、くらいの気持ちで貸しているが、M君のほうも、もうすこしちゃんと貯金して欲しい。

打ち合わせの予定が朝の3時まで深夜のジョナサンでバカ話をする。

友達のこととか、日常の発見、周りにいるやな感じのおじさんの分析(俺は予備軍らしい)とかワンピースやハンターハンターのどのキャラが一番強いのかとか、まだ回収されていない伏線のこととかを喋り散らす。

とにかく楽しい時間だった。

打ち合わせの前にSPBSに寄る。

前にライブかなにかで目にして少し気になっていたNew Neighbors ZINEが置いてあったので、パラパラめくる。『SMOKE』という妻が好きな映画が特集されている。ポール・オースターというこれまた妻の好きな小説家が原作・脚本をつとめていて、有名だしいい映画なのだが、普通の雑誌で取り上げられることはなさそうなので、こういう作品を扱うのはいいな、と思い最初の一編を読んでみる。

Homecomingsというバンドのギタリストである福富さんが綴った短いエッセイで、ポール・オースターの『ムーンパレス』という小説を軸にオースターの作品についての記憶と、ぼんやりとした焦燥と鬱屈に包まれた福富さんの大学時代がチャーミングに描かれている。

小説のタイトルであるムーンパレスというのは作中で主人公が恋人や友人達と幸福な時期を過ごす中華料理屋なのだけど、福富さんにも愛おしい時間を過ごしたムーンパレスのような中華料理屋があったらしい。
俺にも20代の前半頃、よく通った中華料理屋があった。夜中に腹が減ると朝まで営業しているその店にいって、水餃子を食べた。当時は恋人だった妻との間でその店を恥ずかしげもなくムーンパレスと呼んでいたこととか、店員のそっけなさ、今よりずっと未来が不安だった反面、自分にはもっと色々なことができると思っていたことなんかを文章を読みながら一気に思い出してこっ恥ずかしくなる。我々がいたあの店は小洒落たムーンパレスなんて名前ではなく、餃子市というのが正式名称がある。でもやっぱりあそこはムーンパレスだよな、なんていう至極個人的な気持ちを福富さんが丁寧な言葉で書き留めておいてくれた感じ。これは俺のための文章だな、と思う。
この人が書いた文章を少しずつ集めていきたい、と久しぶりに思える経験だった。

すっかり興奮して別の号も買ってから打ち合わせに。

『これからの本屋読本』をもうすぐ読み終わる。

これから本屋をはじめる人、現在本屋で試行錯誤している人に向けられた本なのだけど、思想的に共感するところが多い上に、かなり具体的なところまで書かれているので非常に参考になった。

ルヌガンガという本屋を立ち上げた方が、資金として1500万円貯めたと書かれていて、電撃が走る。まだ、100万円ほどしか貯まっていない。先は長い。貯金日記にもなりそうだ。

内沼さんはこのブログを始めるきっかけのひとつである『読書の日記』も編集されているし、とても影響を受けている気がしてきた。来年のこれからの本屋講座は受講したいな。

眠れなくなって物件をあさる。
なんとなく、東京R不動産に載っているような、普通の人は住まないような物件を借りるのがよい気がしている。北鎌倉面白い物件があって、いろいろ夢想する。
鎌倉、いいなあ鎌倉。

自然の中で子育てしたいという気持ちが湧いてきたけど、この物件をみて捏造された想いという気がしないでもない。
https://m.realkamakuraestate.jp/estate.php?n=4579

仕事の前に竹島書店江古田店に寄る。

近所にある、よく使う書店である。
漫画の品揃えがよく、夜遅くまでやっているのでとても重宝している。
働いている人の中に漫画好きがいるのだろうな、というのがよく分かる棚だ。こじんまりとしたスペースにびっちり本が詰まっているのも素敵だ。

ほとんど毎日のように来ているので、どこにどんな本があるのかだいたい把握している。新たに面陳されている新刊をざっとみて外に出る。

Mくんと書店を開く場所についてたびたび話すのだけど、もともとある書店に迷惑をかけたくない、という意見は一致している。ただ、Mくんはすでに本屋がある町は避けたほうがよいというが、俺は品揃えが違う本屋が近くにあるのは、むしろ相乗効果を生むんじゃないかなと考えいる。例えばこの店の近所とか。妙にいい本が置いてあるブックオフも近くにあるし、本好きが集まってくるんじゃなかろうか。

江古田はいい町だ。長く住んでいるので勝手が分かるし、店を出すなら学生街がいいなあとぼんやり思っている(江古田には大学が3つもある)のでやっぱりここに店を出すのも悪くはない気がしてくる。

Mくんはもっと田舎がいいと言っている。
俺は店を出すならその町に住みたいと思っているので、そうなると田舎に住むことになる。娘はそっちのほうが過ごしやすいかもな、なんてことも考えながら仕事にむかう。今の仕事は副業が許されているので、できれば続けたいから、職場までの交通の便も考慮したい。というようなことまで考えながら、そもそも開業資金もぜんぜん溜まっていないのに、毎日物件を探している。これが案外楽しい。

『七人のイヴ Ⅱ』を3割くらいまで読み進めた。

地球と宇宙に引き裂かれる親子の別れにやたらと感情移入していまう。
たぶん娘が生まれることが関係しているのだろうが、読んでいて動揺する瞬間がある。
とはいえウェットなだけの話ではない。破滅は淡々と進行していく。感情を殺さないと動けない。気を抜くと死ぬ。宇宙怖い。