福井へ向かう道中、東京駅で『未必のマクベス』を買って読み始める。

電車や新幹線の長距離移動が好きだ。飛行機も嫌いじゃない。
じっくりと本が読めるのが嬉しい。
旅行の楽しみの半分くらいはこれだ、という気すらする。

福井へは友人らと仕事と趣味半々、くらいの用事でいく。
のんびりした旅だ。
隣座ったEさんが新幹線でビールを頼んだので、つられて頼む。
小さく乾杯をして飲む。やたらとフルーティな金沢の地ビール。美味い。
それからEさんはNetflixへ、こちらは本に戻る。幸せだなあと思う。

内容をよく知らないまま買ったのだけれど『未必のマクベス』はサラリーマン小説だった。
飛行機のトラブルで偶然訪れたマカオで、娼婦に「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」と告げられるという冒頭から『マクベス』になぞらえて話が展開していく、という魅力的な滑り出し。
アジアの雰囲気と呪術めいた演出に胸を踊らせながら読みすすめるが、しばらくは大きく物語が進まない。

しかしあるとき、唐突にこの物語の目的が明かされる。
その手つきが素晴らしく一気に引き込まれる。

と、いいところで福井駅に着く。
福井は敬愛する舞城王太郎の出身地で多くの作品で舞台にもなっているが、聖地巡礼をする時間はなさそうなのが残念だ。