『蛍・納屋を焼く・その他の短編』という短編集に入っている、村上春樹の短編だ。
一昨日観た映画、イ・チャンドンの『バーニング 劇場版』の原作なのだ。
映画がすごく良かったのだけど、原作も負けず劣らず素晴らしかった。
とはいえ、映画を観ていなかったら、その語りの巧みさ故に、ちょっとしたホラーだなあなどと思うだけで読み飛ばしていたかもしれない。
小説や漫画など、別のジャンルの作品を映像化するのは、少なからず批評的な行為だと思う。
批評的な行為、というのはその作品をどう読んだか、どういう作品だと思うのかを表明することに近いということだ。そして、優れた批評は作品の新たな見方や可能性を教えてくれる。
この作品でいうと「資本主義の中で自由に生きるには?」という今感心があるテーマについても考えられそうなモチーフが散りばめられていることが分かった。
『バーニング 劇場版』は映画としても素晴らしかったが、小説の隠された(というか、鈍感な俺には気づけない)テーマを教えてくれた。理想的な映像化で豊かな経験をできたと思った。