突然、月が突然7つに分裂する。
2年後にその欠片が降り注ぎ、地球は生命の住むことのできない火の海になることが判明する。
人類は種の保存をかけて宇宙ステーションへの移住計画をスタートするが、もちろん2年で全人類が移住できるはずもなく……というところから始まるSF小説。
実際にある技術しか使わない、とかエイリアンをださないとか、センス・オブ・ワンダーではなくリアリティに振り切ることを著者が自らに課している。
そのためカタストロフが起きて地球から逃げる、というSFでは珍しくない設定に生々しいリアリティがある。
天才科学者やキャラの濃い宇宙飛行士など登場人物も魅力的だし、淡々と描写されるカタストロフは怖いものみたさの好奇心を刺激するが、なにより本から離れて現実の地球の死を想う瞬間が面白い。
自分のこととか、これから生まれてくる娘のこととか、家族や友人のことを考える。自分が死ぬこと、周りの人が死んでいくことを考える。そして地球の滅亡を考える。
あらゆるものが隕石の爆風の中に消えたとして、あとになにも残らなかったら、そのすべて無駄だったということなのだろうか。
小説の中の人々はひとまず、人類を存続させること、「地球」でのあらゆることを遺そうと躍起になっている。
自分ならどんな風に生きるだろうと、読みながら繰り返し繰り返し考えている。
地球が終わる、ということは絵空事でなくありえる。