去年の夏の終わりに娘が産まれて生活が一変した。

本を読む時間が減り、文章を書く時間はほとんどなくなった。
頭の中に読みたい本、書きたい文章、観たい映画……が積み重なっていく。
それでも今、幸せだなと思う。
娘が可愛い。
同時にいくばくかの焦燥感がある。
子供を育てた先輩たちが口々に「子供ができたら自分の時間がなくなる」という。
俺はその話を聞きながら、なんとなく自分はそうはならないんじゃないかと思っていた。
いや、「俺は子供を育てながらも本を読み、映画を観て、ものを考え文章を書くだろう」と確信を持っていた。
しかし、ぜんぜんそんなことはなかったのだった。
未来の自分にたいする希望はだいたいあてにならない。
それで、過去の自分がどう思っていたかなんてことはいつの間にか忘れられていくのだ。
娘と一緒にいる幸福も、決して忘れないだろうと思うようなことだからきっと忘れていくのだろう。
本屋がある世界が正しいと思っている。娘に本屋の側で過ごして欲しいと思っている。
そんな本屋を作ろう、という気持ちも、いつの間にかなくなっていくのかもしれない。
ただ、少なくとも今はそう思っているんだ、ということを書いておきたい。
書いていきたい。

例えこの文章を最後にブログが更新されなくなったとしても、少なくとも今はそう思っている。